ミカン農家おしかけ騒動2 絶望編

昔の自転車日本一周

2013年10月6日 自転車日本一周の旅 19日目

前日の夜、旅先で知り合ったMの両親が経営するバーで肝ったま母ちゃん風のYさんと知り合った。
Yさんは家族でミカン農家を営んでおり、私は酒の勢いもあって1週間住み込みで雇ってもらえると約束してもらった。

翌朝、荷物をまとめてビジネスホテルをチェックアウトし、近くの神社に立ち寄る。

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常識的な時間帯として、10時頃にYさんに電話をかけた。

「あの、昨日バーでご一緒した柴田ですが、、、」

無事に電話は繋がり、近くまで車で迎えに来てもらうことになった。
車に乗せてもらい、数分で住宅街を抜けて上り坂が現れる。坂を登り切って下りになると、左右の山の斜面は一面ミカン畑となり、道の先に太陽をうけてキラキラ光る海が現れた。
私は最高のロケーションで素晴らしい経験が出来ると胸を躍らせた。

だが、直後にミカン山から突き落とされるような話を聞いた。
Yさんはハンドルを握りながら助手席の私に語りかける。

Yさんは私が電話をかけた後で、つまり、ついさっき家族に「昨日、バーで知り合った青年が一週間ウチでホームステイします」と伝えたらしい。

そしてYさんは、子ども達3人(全員成人)から非難の集中砲火を浴びたという。
「家の中が軽いパニック状態になってたわ」と言う。

私は青ざめた。
半ば強引だったとはいえ、住み込みで働く事を了承してもらえたので住み込みでバイトを雇うこともあるのだと思っていた。
だがそんなことは過去に一度もなかったらしく、私は招かれざる客だと知らされたのだ。

後から聞いた話なども総合するとこうだったらしい。

昨夜、Yさんはバーでイケメンの隣に座って上機嫌になっていたが、住み込みで働きたいという話が出て「面倒な事になったな、、、」と思った。

曖昧にではあるが了承らしき返事までしてしまった。
だが連絡先を教えなければ逃げ切れると考え、電話番号だけは死守しようと決めた。
しかし、バーの夫婦も「電話番号教えてあげな!」と助け舟を出してくる。
Yさんは電話番号を守り切れなかった。

翌朝、酔いがさめたYさんは激しく後悔した。
「酔った勢いで若い男を拾った」などと子ども達に言えるはずがない。

しかし、まだ希望はあった。
昨夜のアキラくんとかいう青年が電話をかけてくるとは限らない。
彼も酔った勢いで頼んできただけで、朝になれば無かったことにしているかもしれない。
だから、まだ子ども達に伝える必要はない。

「電話よ、かかってくるな、かかってくるな、、、!」と念じながら過ごしていたら、かかってきてしまった。
落胆しながら通話ボタンを押すと、やはり昨夜の青年だった。

「今から車で迎えに行く」と告げて通話を切る。
その日は日曜だったので、子ども達が3人とも家にいた。
3人に向かって、「今日から一週間、バーで知り合った青年をホームステイさせる。ついては今からそいつを迎えに行ってくる」と伝える。
決まってしまった事なので、相談ではなく突然の宣言である。

そしてYさんは苛烈に降り注ぐ非難の嵐をやり過ごし、私を迎えに来たというのである。
私は迷惑でしかないし、そんな話を聞かされてYさん家族にどんな顔をして挨拶すればいいのだ。

「なんやねんコイツ」と思っているに違いない。ちょっとした修羅場である。

海岸を走る車窓を眺めながら、「やっぱりやめます」と言おうか迷っているうちにYさんの家についてしまった。

ミカン農家おしかけ騒動、労働編へつづく

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