染みわたる温泉卵

昔の自転車日本一周

2013年10月3日 自転車日本一周の旅 16日目

高知県にある足摺岬のキャンプ場で起床。

次の目的地である愛媛県へは、昨日の道を引き返すのが最短距離である。
しかし、高低差の激しいアップダウンの続く道を引き返す気が起こらない。

本来の進行方向とは逆で愛媛からも遠ざかるが、半島をそのまま反時計回りに走って付け根部分まで戻ることにした。
付け根からは再び山を突っ切ればいい。

行き先が決まって走りだしたものの、疲れが抜けておらず朝からペダルを踏みこむ太ももがダルい。
ちょっとした登りでも極端な疲労感におそわれる。

こんな日は早めに切り上げて休もうと思った。
60㎞ほど走った昼過ぎ、前日に通り過ぎた四万十市に戻る。
河川敷に無料のキャンプ場があると聞いて電話で予約しておく。

すばやい体力の回復を期待して、スーパーで栄養価の高そうなチョコと温泉卵を買ってきた。

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しかしこの温泉卵には驚かされた。
美味しかったというだけではない。
とろりとした白身とまろやかな黄身を飲み下したそばから、体の隅々に滋養が染み渡るような心地よさがあった。
そんな体験は生まれて初めてである。

たてつづけにもう一つ殻を割って飲み下すと、また全身にじわりと心地よさが広がる。
結局、3個入りの温泉卵を一気に食べた。

重い荷物を付けた自転車を毎日100㎞ほど漕ぐ生活を始めて10日経った頃から、食べ物に対する体の反応が変わった。
高カロリーな物を食べれば全身が満たされていくのを感じ、スープパスタにぶち込んだだけの野菜が驚くほどおいしく、スープに野菜のエキスが溶け出していることまで繊細に感じ取れる。

そのなかでもこの温泉卵は格別だった。
半額でも栄養は損なわれていなかったのだ。
たぶん。

キャンプ場となっている河川敷では高校の球技大会かなにかでサッカーが行われていたらしい。
大勢の生徒達が男女入り乱れて芝生のグラウンドでキャッキャしている。

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そんな中でテントを張ると遠くからでも変に目立ってしまいそうだったので、しばらく土手に寝転び本を読んで時間をつぶす。

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10月になったのに大きな入道雲がもくもくしていて夏みたいだった。

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つづく

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