2013年7月末、新卒入社から2年3ヵ月勤めた会社を辞めた。
自転車で日本一周するというのが退職理由だったが、本当は働くモチベーションを維持できなくなっただけである。
転職活動の前にモチベーションを取り戻そうと自転車旅を選んだ理由も、体力のある若いうちに出来る事として選んだくらいであまり深い意味はなかった。
退職から2か月間は初自転車旅の準備をしながら夏の暑さが落ち着くのを待った。
日本一周は南周りで走り、まずは広島からしまなみ海道で四国に渡る。
四国を時計回りに一周するのが当面の予定である。
そして9月18日の朝7時過ぎに京都の実家を出発する。
両親はたいそう心配していた事だろう。当時は長すぎる反抗期だったのでそんな事を考えもせず、大した挨拶もせずヒンヤリした朝の空気のなか逃げるように家を出た。
家を出たはいいが、とてもフラフラする。
テントや寝袋、調理道具や着替えなど生活道具一式を積んだ自転車に乗るのは初めてだったのである。
桂川のサイクリングロードに出るまでは通勤路を走ったのだが、荷物をフル装備した自転車でビジネス街を走るというのはなかなか恥ずかしい。
1時間ほどでサイクリングロードに出る。
2~3日前に大きい台風が来て桂川が氾濫したので、河川敷はところどころ土砂や流木が散乱している状態だった。
昼前になって大阪府高槻市の公園で昼食を作る。
某アウトドアショップ店員が「一番安くて腹持ちがいいのはペンネである」と旅メシ論を語っていたので素直に聞き入れる事にした。
会社を辞めて旅に出るのだからアドバイスを実行する柔軟性も必要だろう。
バジルソースを和えるだけのジェノベーゼ風。
調理中、ペンネは茹で時間がパスタの倍くらいも必要なのでガスがもったいなく、むしろどこがコスパええねんという結論に至った。
(このペンネは通常12分、アルデンテで10分の茹で時間だった。)
この一袋を完食した後、旅の中でペンネを買う事は二度と無かった。
こうしてペンネ生活は早々と幕を閉じた。
茹で時間短縮のために硬いままで食べて胃もたれしつつ午後の走行である。
夕方の神戸市内で夜の宿を探す。旅中は予算の都合で野宿中心になるが、初日の疲れもあって自分を甘やかしキャンプ場に向かうことにした。
地図で「しあわせの村」という施設を見つけて向かう。
坂の町だけあって荷物満載の自転車旅ビギナーにとって苦難の登りが続いた。そのうえ車での入場が基本なのか、自転車で向かう方法がわからず迷いに迷う。
山の中を通る高速道路のふもとまで登ってようやく到着した場所は巨大リゾート施設のような場所であった。
目的のキャンプ場だけでなく様々なスポーツ施設や入浴施設、さらには老人ホームまであるというユートピアの顔をしたディストピアという感想が出てくる程になんでも揃っていた。
キャンプ場は持ち込みテントの設営ができず、利用は常設テント一択。
ちょっと値は張るがこれはこれでワクワクする。
入浴施設で記念すべき長旅初日の疲れを癒す。
別の場所の記憶と混同しているかもしれないが「ジャングル風呂」という感じのお風呂だった。
入浴後、テントに戻って夕食を取りたかったが何も買ってきてなかった。
かといって胃もたれを引き起こしたペンネ(ゆで時間を短くした自分が悪い)を食べる気が起きずリンゴをかじる。
つづく
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