2011年2月
屋久島に上陸した翌日の早朝5時半。
まだ明るくなる気配もない冬の朝である。
キャンプ場からバイクで登山口へと向かった。
もののけ姫の森を通ってからトロッコ道に合流して縄文杉にたどり着くコースである。
乗り合いバスよりも一足先に入山して一人きりを楽しめる。
深いしずかな山道を一人きりで歩く。
トロッコ道と合流して単調な道をしばらく歩く。
途中からトロッコ道を外れて階段を登り始めると、チラホラと残雪が。
標高が高くなるにつれてどんどんと雪深くなっていくが、春が近くなってザクザクに固まった氷のような状態。
後半はずっと深く積もった氷の上を歩いていた。
ところどころに穴も見られる。
中が空洞になっているところを踏んでしまうと、ズボッとはまってしまう。
前方を若いガイドさんに連れられたカップルが歩いていた。
何ごとかを話しながら意気揚々と歩くガイドさん。
するとその時、ガイドさんの踏みしめた氷がバリっと割れて、そのまま片足が付け根まで大きな穴にはまってしまった。
その際に上体は崩れてベチャッと顔面ごと氷に叩きつけられていた。
ガイドさんは片足を引っこぬいて立ち上がると、なにごともなかったかのような平静さで言い放った。
「ここに穴があるから気をつけてください。」
心の中で、「あんたが気をつけい!」
とツッコんだ。
縄文杉は、モンスター級の気配を静かに放ちながら佇んでいた。
今日も一人のキャンプ場で過ごす。
つづく。
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