オジサンのちょっといい話

昔の自転車日本一周

2013年9月28日 自転車日本一周の旅 11日目

前日に知り合った青年、イシダ君である。

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彼は実家の牧場を継ぐ前に見聞を広める旅をしている。
北海道の網走を出発して167日目という旅の先輩。
イシダ君は四国を八十八ヵ所巡りをしながら回っているという。
この日は高知県の室戸岬までずっと一本道なので、二人で走ることになった。

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昼過ぎに室戸岬に到着し、まだ早い時間だったが温泉に入ることになった。
露天風呂で疲れを癒やしていたら、50代くらいのオジサンに声をかけられた。
「君たち、このへんの人じゃないね。どこから来たの?」

会社を辞めて自転車で日本一周をしていて〜、と説明すると、
「素晴らしいね!いい経験になるね!」という好意的な言葉をかけてもらった。

こういう時、「会社辞めてまで何やってんだ、、、」と真剣な顔で否定される場合もままあるので、聞かれても自己紹介するのは毎回ちょっとためらってしまう。

今回声をかけてきた方も旅行中らしく、普段は高専で教鞭をとっているという。
会社を辞めての旅にも寛容な先生だったから、興味が湧いて聞いてみた。

「最近の若者ってどうですか?」と。

「そうだね〜」と語りだしたオジサンが、「最近は、グレーゾーンを知らない子が多い気がする」と言っていた。

物事を正解か不正解か、1か0か、白か黒かで判断してしまいがちだと。
白と黒の間には、数えきれないほど無数のグレーゾーンやポイントがある。

社会に出ると、そのグレーゾーンの中でどう自分と折り合いをつけていくかが大切になってくる。

まっさらな白い紙にちょっと墨がはねただけで、もう終わりだと落ち込むキレイすぎる子は増えていると思う。
本当は、そのはねた墨がその人の生き様であり、おもしろいところなんだと。

昔(そのオジサンの学生時代)は、教師もいいかげんな人が多かった。
授業中に雑談ばかりしていて、テストに教えられていない所がたくさん出たりもしていた。

生徒も生徒で、「教えられていません!」とは言わずに折り合いをつけてやっていた事もあったという。

オジサンの言っていることがわかる気がした。
人間にも工業製品のような完璧さを求められている気がする。

ちょっと傷がいったり汚れがはねても落ち込むことはない。
それらは味わいだ。

この話を聞いたのは10年前だけれど、10年経って潔癖すぎたり息苦しいような相互監視の空気感はより強まったのではないかと感じる。

とにかく、いいおじさんだった。
いい話だったけど、長風呂でのぼせた。

温泉に入ったあとは八十八ヵ所巡礼のお寺を二つ巡り、夕食はご当地グルメだという豚太郎のミソカツラーメンを食べた。
少し辛めの味噌ラーメンにヒレカツみたいなのが入ってて美味。
ずっと自転車に乗って疲れているとなんでも美味しく感じるんだけれども。

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つづく

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